院長コラム

ビスフォスフォネート剤による顎骨壊死について

今回は、ビスフォスフォネート系薬剤投与と歯科治療についてお話ししたいと思います。ビスフォスフォネート静注剤は、主に癌に関連する病態の治療と管理に使用されています。具体的には悪性腫瘍の高カルシウム血症、乳癌、前立腺癌および肺癌などの固形腫瘍の骨転移による骨格関連事象の治療のほか、多発性骨髄腫の溶解性病変の管理などがあります。ビスフォスフォネート静注剤は高カルシウム血症の予防と軽減、骨疾患の安定化ならびに骨格病変の存在下での骨折の予防に有効である。
ビスフォスフォネート経口剤は骨粗鬆症の治療薬として利用されています。
近年、この薬を投与されている方の顎顔面領域の進行性露出壊死骨が問題となっております。現在、発表されているビスフォスフォネート静注剤と顎骨壊死の累積発現率、0.8〜12%と推定されています。
ビスフォスフォネート経口剤は、ビスフォスフォネート静注剤よりも顎骨壊死の発現率は明かに低く重症度も低いとみられています。しかし、経口投与が3年を超えると発現率が上昇すると考えられています。
歯科治療においてビスフォスフォネート系薬剤投与されている方の抜歯、インプラント、歯周外科処置などを行った場合行わなかった方より7倍以上顎骨壊死の発症率が高くなります。そのため、全身状態が許せば処置の前後3ヵ月間は、ビスフォスフォネート経口剤の使用を中止しリスクを低減することが提案されている。
もっとも重要なことは、ビスフォスフォネートによる治療開始まえに歯科検診を行い、保存可能な歯とそうでない歯と判断し抜歯などの歯科処置を完了しなければならない。また歯周組織の炎症なども治療しなければならない。
しかし、虫歯治療、入れ歯、予防処置などは、行っても、問題ありません。もうすでにビスフォスフォネート系薬剤による治療をされている方は必ず歯科に受診されるときにお知らせ下さい。

参考文献米国口腔外科学会提言書