院長コラム

親知らずの痛みについて

今回は親知らずについてお話したいと思います。親知らずとは第3大臼歯のことを言います。前歯から数えて8番目の歯です。本来は歯がはえてくることは生理的現象でとくに痛みや腫れを伴うことではありません。しかし、人類の進化や生活様式の変化により現代人は、顎の骨が退化しだんだん小さくなってきているようです。また昔よりも栄養状態が良くなってきているためか歯が大きくなっています。そのため歯のはえるスペースが、小さくなり歯の位置異常や歯が、はえてこなかったりします。
親知らずが上下左右4本そろってはえる割合が縄文時代には81.0%だったのが古墳時代62.7%、鎌倉時代42.9%、現代は36.0%に減少してきています。親知らずが、はえても斜めにはえたり、歯肉に半分被覆されていたり、骨の中から出てこなかったりします。そのため、親知らずの周りの歯肉が炎症を起こしたり、虫歯になりやすかったり、歯周ポケットを形成してそこに細菌が繁殖したりします。初期の炎症では、歯の周りが腫れたり痛みを伴いそれが進むと骨の周りの柔らかい組織や喉の周りの軟らかい組織に炎症が診られます。歯ブラシで清掃することが困難なため体調の悪い時など、自分の免疫力が低下しているときに細菌の種類や数が増加して痛みや腫れが出たり化膿したりします。とくにひどい時は、顔面の半分が痛くなったり、頭痛、耳痛などを訴えたりします。さらに炎症が進み筋肉まで行くと開口障害を起こしたり嚥下痛を起こしたりします。
全身的には倦怠感、違和感を訴え37〜38℃の体温上昇を認めることもあります。また顎骨のほうに進むと顎骨炎を引き起こします。
治療は急性炎症を抗生物質、鎮痛剤を飲んで抑えてから抜歯します。親知らずの抜歯を非常に恐れている方も多いと思いますが、強い痛みや炎症を抑えてからでしたら抜歯の最中は麻酔が効いていますので痛みはありませんし、術後も薬を飲みますので痛みをコントロールすることもできます。抜歯後の腫れはどんなに早く抜けても、起こります。しかし、腫れることは生体の正常な反応なのである程度は仕方ないことです。
親知らずの痛みや腫れを何度も繰り返すよりも症状のない時に早めに抜歯することをお勧めします。